ベトナムは1993年より土地や建物が所有できるようになり、その後過去数回の上昇/下降を経て今は安定的な成長期となっています。
今回の記事では過去のトレンドと未来の市場予測という視点で、ベトナム不動産市場について考えてみます。
ベトナム不動産の過去のトレンド
過去の不動産の成長率を簡単に振り返ってみましょう。
出典:BizLIVE
1993年~1995年 上昇トレンド
1986年に経済開放が始まり、そして最初の法律が施行されたのが1993年。まさに不動産市場がスタートした年です。経済開放後の経済の伸びは力強く、1993年のGDP成長率は8.1%、1994年は8.8%、1995年は9.5%となっており、それに伴い不動産価格も上昇を見せました。
1995年~1999年 1回目の停滞
不動産価格の上昇が抑えられたという記録があります。
2000年~2002年 数年で2倍の高騰
この間、不動産価格はわずか数年で2倍以上の高騰を見せました。
2003年~2006年 2回目の停滞
ベトナム政府は土地法を改正し、過熱していた不動産市場が引き締められました。
法律改正により将来における投資環境を整備したと考えられます。
2007年~2009年 インフレに乗って上昇
世界の新興国投資ブームもあり2007年に株価がピークを付けた頃から、資産が不動産市場に流れ込みました。インフレや20%を超える高金利などの要因も重なりました。
2010年~2013年 3回目の停滞
銀行からの資本引き締めや、2009年における供給過剰により相場が引き締められました。
2014年~2020年 安定成長
2015年に改正された現行法においては外国人の保有が許可されることなどが盛り込まれました。ベトナム不動産の市場はまだできてから30年弱と歴史も浅く、金融政策や関連法規を整備しながら今に至ってきています。
ここ5年間の価格上昇率
2014年から5年間の価格上昇率はハノイ市とホーチミン市では大きく異なりました。
ベトナムの不動産価格は伝統的にハノイ市のほうが高額でした。しかし、その価格差は2014年にはなくなり、現在ではホーチミンのほうが高額となっています。
ハノイ市の不動産価格は直近5年間で16%の増加となっています。これは、年利に直すと3%前後であり、この5年間における最大値上がり幅も5%でした。
ハノイ市の開発は西部に集中して行われており、カウザイ地区やミーディン地区には省庁の移転プロジェクトやF1会場などがあり今後の値上がりが期待できるエリアです。
ホーチミン市の不動産価格は2014年の時点ではほぼハノイと同価格となっていましたが、その後5年間で53%のも増加を見せました。ホーチミン市では2区トゥーティエム地区や、メトロ1号線沿いの9区、トゥードゥック区等で大規模な開発が相次いで行われています。2区トゥーティエム地区ではホーチミン市の新たな中心部になることが見込まれていることや、橋の建設など交通アクセスの抜本的改善という要因などを受けてとても高額で取引が行われており、不動産価格の上昇に寄与していると考えられます。また、9区、トゥードゥック区ではメトロの開業に合わせてベッドタウン化が進んでおり、価格が2倍を超える高騰を見せています。アパート価格も同様に上昇しており、具体的には2017年には2300万~3000万/平米だったものが、2020年には4000万~4500万/平米と2倍弱担っています。
ホーチミン市の開発は東部に集中して行われており、今後も数々のインフラ案件が控えており価格が上昇していくと予測されています。
今後の不動産価格を予測する
ベトナムの不動産相場は今後も上昇していくと予測されています。ベトナムの経済は日本における1970年代とにているという声もあり、今後、高度成長時代を迎えてベトナム人の生活も大きく変わり、住宅に関する考え方も変わっていくと予想されています。
人口の増加
ベトナムの人口は現在9600万人を超えており、10年以内に1億人を突破することが確実視されています。東南アジアでもインドネシア、フィリピンに次ぐ第3位の人口を擁しているため、今後の経済発展により一気に大きな市場となると言われています。
ベトナムの人口増加は2060年前後まで続き、1億1500万人程度になるといわれておりますので、単純計算でも2000万人の人口が今後増加すると見込まれています。なお、そのときには人口減を続けている日本と人口が逆転すると見られています。つまり、2~30年後には日本よりも人口の多い国となるとされています。
都市化人口の増加
ベトナムでは従来より親戚一同で大きな家に住む文化となっていましたが、最近では若者層を中心に都市部に移り住むライフスタイルを選ぶ者も増えてきています。家族のカタチが大家族から核家族に移行することに伴い、郊外の大きな一軒家から通勤利便なアパートへの住居需要の変化が今後続くと見られています。
ベトナムにおける都市化率は今後も増加し続けるため、ホーチミン市やハノイ市、ダナン市、そしてホーチミン市近郊のドンナイ省、ビンズン省やハノイ市近郊のハイフォン市などは特に著しい人口の増加が予測されています。
ホーチミン市の人口は2000年には437万人だったのが、今では800万人となっており、20年間で1.8倍となっておりこの傾向は今後数十年に渡って続いていくと考えられています。
この人口成長が続けば2050年には今の2倍程度になっている可能性も十分にあるかと思います。
中流層の増加
過去十年のベトナムのGDP成長率は5~7%前後で推移しており、その経済成長に合わせる形でベトナム人の所得も増加を続けています。一人当たりGDPは2000年には390ドルだったものが、2010年には1317ドル、2019年には2715ドルとなっています。1995年が275ドルだったことを考えると、24年間で10倍にも成長しました。この成長が今のベトナム経済、そして消費を動かす原動力となっており、この傾向は数十年に渡って続くといわれています。
更にこれを各省市別に見ていくと、ベトナムの農村部では蔵方あまり見られない一方で、ホーチミン市やハノイ市などの都市部におけるGDP成長率は毎年10%を超える急成長を見せており、それに比例して平均所得額についても大きく他の都市を引き離しています。
1990年代からの中国が国全体としては発展途上国と分類されつつも上海や北京などの大都市急速に発展を見せたように、ベトナムにおいても国全体で経済を見るのではなく、ホーチミン市やハノイ市が中国における上海のような発展を見せていくという予測が、現在のデータから行えるのではないでしょうか。
ベトナムの不動産市場まとめ
これまでご説明させていただきましたように、ベトナムの不動産市場は法律の整備など市場自体の成熟も経て成長を続けています。
そして、
- 国全体での人口増
- 都市化率の上昇
- 所得額の上昇(特に都市部で顕著)
という状態が今後数十年に渡って続くと予測されています。
数年の前の資料を見てしまうと、それだけでベトナム人の生活、所得を見誤ってしまうほどの急激な変化の中にありますので、短期的な予測や現在のベトナム人のライフスタイルから投資の判断をしないことが肝要ではないでしょうか。
マクロ経済の進展に合わせてライフルタイルが変化していくというのは日本も、中国も、そして他の東南アジア諸国も通った道であり、それに伴い不動産需要の形も変わってきたのではないでしょうか。ベトナムにおける不動産投資も長期的に考えることが利益につながると考えています。
コメント
[…] […]