ベトナムの経済の現状と今後の展望を調べてみました

ベトナムの経済の現状と今後の展望を調べてみました ベトナム不動産情報

ベトナムへの投資を検討しているのであれば、ベトナムの経済についてはとても気になりますよね。ベトナムという国を理解する手助けとなる主要なデータをもとにベトナム経済の今後の展望を考えてみました。

ベトナムの国土・人口

ベトナムの国土や人口を「知らない」という人は意外と多いのではないでしょうか。実はベトナムは人口9600万人を超え、1億人突破の近い世界でも有数の人口大国なのです。なお、日本は世界で人口10位のかなりの大国です。日本は小さな国、という表現を見ることもありますが、世界GDP3位、人口10位の大きな国なのです。

その日本の人口とも20年後には逆転すると言われているのがベトナム。東南アジアではインドネシア(人口2億4000万人)、フィリピン(人口1億800万人)に次いで人口が多い国です。平均年齢も31サイト、日本の47歳に比べると遥かに若く、若くて人口の多い元気な国と言うイメージそのものです。

国土面積も33万平方キロメートルと、日本よりも一回り小さいくらいの大きさです。人口も、面積も、日本より1割強小さいと考えて間違いないでしょう。ただし、人口については今後は日本と逆転することとなります。

ベトナムは縦に細長い形状をしており、北は中国と接する山岳地帯で、西はラオス、カンボジアと接しています。南部及び東部は南シナ海に面しています。なお、ベトナムでは南シナ海のことをBien Dong(=東海)と呼称します。

北部は紅河デルタ、南部はメコンデルタという大きな川がもたらす肥沃な大地が広がっており、昔から稲作を中心とした農業が盛んな他、カカオやナッツ、果物などの栽培も行われています。中南部には中部高原と呼ばれる標高500~800mのエリアが広がっており、農業が行われている他、山岳地帯でも棚田を利用された稲作が行われており、国土のほぼ全域で農業が行われています。

東側のすべてが海に面する立地であるため、港も多く、特に北部のハイフォン港、南部のバリアブンタウ港はベトナムの2大港湾となっており、欧米直行便も就航する物流拠点となっています。

ベトナム経済の歴史

ベトナムは1945年9月2日に独立宣言を行い、ベトナム民主共和国が樹立されました。これは東南アジアにおける初めての社会主義国家です。ベトナム南部はフランス及びアメリカがベトナム国、ベトナム共和国を樹立し、インドシナ戦争(ベトナム戦争)へと入っていきます。
その後1975年に南北ベトナムは統一することとなりますが、北部は社会主義国家、南部は資本主義国家だったため、旧南ベトナムは急速に社会主義化が進められ、私企業の国営化などが始まりました。
その後農業と工業を中心とした社会主義経済が回っていきますが1986年には市場経済システムを採用する「ドイモイ政策」が提起され、市場経済へと転換しました。そういう経緯から、この1986年がベトナムにおける市場経済の始まりと考えることができるでしょう。

1990年には金融機関の参入が自由化され、国営以外の金融機関が生まれることになります。その後2000年に証券取引所が設立されました。2010年前後は激しいインフレに見舞われましたが、2014年以降は安定を保っています。また、2015年には外国人による不動産所有が開放され、不動産投資も始まるようになりました。

ベトナムの金融市場は日本と同じと思っていると意外と違うということもたくさんありますが、それはもともと社会主義国であり、市場開放してからの歴史がまだ短いという理由があるでしょう。東京証券取引所の全身である「東京株式取引所」の設立が1878年だったのに対して、ベトナム初の証券取引所である「ホーチミン証券取引所」が2000年というところを見ても、日本との市場経済の歴史の違いが伺えます。

ベトナムの経済水準を一人あたりGDPから考える

2019年のベトナムの一人あたりGDPは2,715ドルです。日本は40,427ドル、ASEANの平均は4,803ドルというところから比較しても、低いことがわかります。一人あたりGDPと平均年収がある程度相関があることを考えると、ベトナム人の平均年収は30万円前後だと言うことができますが、そこまで大きく外れてはいないでしょう。

なお、ベトナムのGDPは2020年初頭に過去の分もさかのぼって計算をやり直すと政府が表明しており、再計算した場合は2017年の一人あたりGDPは2985ドルであることから、現在は3500ドル程度と推測されます。

しかし、ベトナムは格差が大きく、ホーチミン市やハノイ市と、地方ではかなり異なってくるので「ベトナム」として一つにくくって平均を見ていてはベトナム経済の実態は見えません。ベトナムの省市別一人あたりGDPを見ると、油田のあるバリアブンタウ賞を除くとホーチミン市がトップとなっており、6,862ドル(2019年)とベトナムの平均の2倍となっています。平均所得なども2倍以上の開きがあり、更には成長率も都市部のほうが圧倒的に高いため、ベトナムの平均を見ていては都市部の成長を見逃すことにもなるでしょう。

現在のベトナムの一人あたりGDPは日本の1970年代前半の水準であることから、今のベトナム経済は日本の1970年代のようだと形容されることもあります。当時とは時代背景や国際情勢が大きく違ってはいますが、これからのベトナムの成長をイメージしやすいのではないでしょうか。

ベトナムの主要産業

ベトナムの現在の主要産業は農林水産業、鉱工業、建設業、サービス業となっています。主要貿易品目を見ると、輸出品目には繊維・縫製品、携帯電話、PC、履物、機械設備となっています。輸入品目は機械設備、PC、繊維・縫製品、鉄鋼、携帯電話となっています。

ベトナムの工業は軽工業と最終組立工程が現在は中心であり、原材料を輸入して、ベトナム国内で加工を行って輸出している様子が伺えます。これらの産業は安い人件費を背景に成長してきましたが、より安い人件費を求めてカンボジアやミャンマーへ移転していく例もあります。それとは逆に、中国から向上移転の流れもあり、米中貿易摩擦の影響もありその流れが加速しています。また、全世界から年間2000万人弱の観光客を受け入れており、観光業も盛んです。

今後は重工業やIT産業、金融産業、観光産業に注力していくとされていますが、ASEAN関税自由化などの影響もあり裾野産業が育っていないベトナムの工業がどう育っていくのかは注目すべきポイントのように思えます。著者の個人的な見解ではありますが、ベトナムの経済は華僑不在で回っており、東南アジアでは珍しく、ベトナム人の経営力には素晴らしいものがあるため、今後の成長が期待できるのではないかと考えています。

2050年のベトナム

最後に、2050年のベトナムの予測を紹介します。2017年にPwCが出した「2050年の世界」という経済レポートでは、2050年までの全世界の経済成長率はベトナムがトップとなり、世界で20位の経済力となると予測されています。なお、分析対象の32カ国のうち最も成長率が低いと予測されているのが日本だということも付け加えておきます。

その一方で少子高齢化も進んでいます。ベトナムは平均寿命の長い長寿国であり、そして合計特殊出生率は2.09まで下がっており、今後も下がると予測されています。ホーチミン市の合計特殊出生率は日本と同水準となっています。ベトナムは2050年前後に人口のピークを迎えると予測されており、そこからは人口減社会となります。それまでにどこまで経済を大きくできるかが、今後のベトナムを決めると言えるでしょう。

ベトナムの経済まとめ

ベトナムの経済を見る時に一つ一つの数字に惑わされず、大きな流れを参照してほしいと思います。この記事でもベトナムの平均年齢や一人当たりGDPという数値を紹介してきましたが、一人当たりGDPは毎年10%前後成長しておりますし、平均年齢も年々上がっているのが事実です。

今の数字は、あくまでも2020年に発表されている数値であり、1~2年もすれば全く違うし数値になっていることでしょう。その時に重要なのは、現在の細かい数字ではなく大きな流れとしてどのようなステージにあるのか、そしてそれに伴い国民の暮らしがどうなっているのか、というところではないでしょうか。

そして、それはそのまま金融市場や不動産市場の値動きとしてダイレクトに影響してきます。ベトナムは若くて元気な国。世界の中で最も成長する国。それは現時点では事実ですが、その言葉だけを見るのではなく個々の街、それぞれの産業に目を向けていってほしいと思います。

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