ベトナム不動産(土地・建物)の所有権や権利書の概要と注意するべきこと

ベトナム不動産情報

ベトナムでは不動産の登記制度が存在しますが、日本の登記制度とは異なる点も多くあります。外国人が保有できる不動産に制限があることや、開発が乱立していることもあり権利書を手にすることができないというケースも発生しています。

この記事では、安心して不動産投資を行うために知っておきたいベトナムにおける土地及び建物の所有権についてご説明します。

外国人が購入可能な不動産の条件

ベトナムにおいては現在外国人による不動産の所有が認められており、投資目的の所有も認められています。
以前はベトナムに居住許可を持っている外国人が自己居住目的のみ購入可能という条件であり、とても条件が厳しかったのですが2015年に法律が改正され(2014年住宅法No. 65/2014/QH13)、制限が緩和されました。

現在は外国人の個人の名義であれば、投資目的(貸借目的)での不動産購入も可能です。購入可能者はベトナム入国許可を得た個人となっているため、ビザなどを持っていない場合でも購入が可能となります。また、投資目的での購入も可能なため、不動産を貸し出して家賃収入を得ることも可能です。外国人が不動産を貸し出すことによって得る収益に対する所得税等の取り扱いも正式に定められ、安心して投資を行うことができるようになりました。

なお、上記は外国人の個人名義での投資であり、法人名義での投資となるとサブリースライセンスを取得する必要があるなど条件が厳しくなります。ベトナムに法人を設立してサブリースライセンスを取得するとなると期間はもちろんのこと費用もかかりますし、決算等で必要な書類も個人不動産投資家の確定申告とは全く違う労力が必要となります。ですので、一般的には個人名義で投資することとなります。

なお、不動産を購入後に自己居住目的で使用するか、投資目的なのかを当局に届け出を行い、許可を得る事が必要となります。

ベトナムにおける土地の所有権

ベトナムでは、土地はすべて全人民の共同所有物であり、政府が管理を行っているということになっています。ですので、土地の所有権は売買することができないのですが、その使用権が売買されています。
これはベトナム人であっても同様です。

ベトナムでの土地の使用権は最長50年間の保有が可能とされており、申請を行うことでさらに50年間の延長が可能となっています。延長や名義変更を繰り返すことにより、何世代にも渡って土地を使用することができるようになっています。また、日本でいう借地権のように政府に定期的にリース料を支払うことで土地を使用するという使用権もあります。

土地の使用権は「土地使用権証書(Giấy chứng nhận quyền sử dụng đất)」に記録されています。
2013年土地法(No.45/2013/QH13)によれば土地使用権証書は土地使用権および付随する財産を証明する法的な証明書として位置づけられています。実務上も土地の正式な権利者と権利内容を証明する非常に重要な書類となっており、表紙が赤色であることからレッドブックと呼ばれています。ベトナムにおける土地の使用権は日本のようにデータベースに登記されており公開されている、ということはなく、各使用権保有者が所有するレッドブックにのみ記録されているという特徴があります。土地の使用に関する条件等が付されていることも多く、土地使用権の売買等を行う場合は取引に際してレッドブックの記載内容を確認することが大事です。

このレッドブックは当局により書き換えが行われますが、この書き換えのプロセスには数ヶ月程度の時間がかかることも多く、購入後数ヶ月間は新しい権利書の発行待ちという状態となることもあります。また、万が一外国人による保有が認められていない土地だった場合など、取引後に書き換えができないということが発覚するケースも一部発生しています。
そのような場合に売買代金を取り戻すことや、契約の無効を訴えることは非常に難しくなりますので、購入前の確認が非常に重要となります。

ベトナムにおける建物の所有権

土地の所有権は上述した土地使用権証書にて管理されておりますが、建物の所有権も同様に「建物所有権利書(Giấy chứng nhận quyền sở hữu nhà)」に記載されます。こちらも、日本では法務局に行けば登記内容を確認できるのですが、ベトナムでは各オーナーが保有している権利書を閲覧して内容を確認するしかありません。建物所有権利書はピンク色の表紙をしていることから、ピンクブックと呼ばれています。

投資用不動産として中古物件を購入する場合は、このピンクブックの内容を取引に先立って確認しておくことが重要となります。
また、新築物件を購入する場合はピンクブックの発行に関する手続きにベトナム人の場合でも6ヶ月前後、外国人の場合は購入後1~2年ほど経ってから発行されるということもあるようです。これは不動産建設ラッシュが続くホーチミン市やハノイ市では申請数が急増して当局の負担が急増したことで単純に遅れているようなのですが、購入後すぐに権利書が手に入らないという状態となっていることは事実です。権利書を実際に手にできるのが取引の数カ月先となり実際に発行されるまでその権利の証明ができないため、確実に発行できる物件を購入することがベトナムにおいては重要になってきます。

外国人は不動産開発プロジェクトの30%を超えて保有することができず、またベトナム人が一度保有した不動産を外国人名義に変更することがとても難しいことから、外国人による不動産購入や取引の特有の注意点が数多く存在します。それらを知らずに購入したことにより、購入後に登記変更を行うことができずに権利書を手に入れることができないというケースも一部発生しているようですので、注意が必要です。

新築物件のピンクブックの申請のためには建設許可が必要であり、新築のアパートの場合は不動産開発プロジェクトの開発許可証となります。その他にも購入の証明書などの書類が必要なのですが、デベロッパーによっては開発許可にはない部屋を勝手に増やして販売してしまったというケースもありました。建物が完成した後に購入者が権利書の申請を行った際に、当該区画については開発許可の範囲ではなかったためにピンクブックが発行されないというケースも発生しています。

建物と土地の取引に関するリスクを回避するために

上述したようにベトナムでは土地と建物の権利書の制度及び手続が整備されており、権利書や関連する書類、手続を確認した上で進めていけば低リスクで不動産の取引を行うことが可能です。現在の法規も不動産に纏わる紛争を減らすことを目的として制定されており、グレーゾーンはかなり少なくなっている印象があります。しかし、それらの書類が揃っていなかったり、内容が異なっていたりするなど法規と異なる点があれば申請が全く受け付けられないという厳しさもあります。一部の書類は英語もありますが、ベトナム語の書類も多いですので、投資家がすべてを自分で確認するということも難しいという事情もあります。

不動産市場が急速に成長しており、プレイヤーも増えていることから、不動産会社の仲介担当者の知識や経験がバラバラという現実があります。ベトナムでは不動産仲介に関するライセンス制度もできており、ライセンスを持つ方に仲介を依頼するというといった信頼できるパートナーと一緒に投資を勧めていくことも重要なのではないでしょうか。

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