ホーチミン市はここ数十年で目覚ましい発展を遂げています。ホーチミン市の1区はもちろん、数年前までは畑や田んぼ、湿地帯が広がっていた郊外のエリアも今は大きな道路が通り、都市鉄道の計画が引かれ、そして沢山の建設プロジェクトが行われています。
本記事では、今後のホーチミン市の姿を予想するために知っておきたい都市計画について紹介します。
4つの中心極
現在のホーチミン市は1区の一極集中となっており、今後は複数の中心極を開発していくという計画になっています。2025年までのマスタープランの中では4つの大きな極をホーチミン市内に開発することとなっています。
(出典:ベトナム情報サイトVIETJO[ベトジョー]「ホーチミン:都市マスタープランで「中心部」を多極化へ」)
東部(2区・9区・トゥードゥック区):ホーチミン~ロンタイン~ザウザイ間高速道路沿い、ハノイ大通り沿い、サイゴンハイテクパーク(SHTP)周辺、ベトナム国家大学ホーチミン市校ソフトウェアパーク周辺の地域を中心に新都市区の開発を進める。
ホーチミン市の副都心と言っても良いエリアで、現在の中心地区である1区・3区の機能を完全に代替する可能性すら秘めている地区です。行政区分も現在は2区、9区、トゥードゥック区となっていますが、今後区の再編が行われる可能性もあると言われています。これらのエリアはホーチミン市メトロ1号線及び2号線の開発により急速に発展が見込まれているエリアです。
タイ・バンコクの中心部がBTSの開通によりシーロムからスクンビット通り東側に少しずつ移動してきたように、ホーチミン市の中心部のメトロや高速道路の進捗とともに東側に移動してくると予想することもできます。
その中でも、2区トゥーティエム地区については本記事後半で詳しく紹介します。
南部(7区・ニャーベー郡):水文学的条件や河川の多い地形を踏まえて、新都市区の開発と共に排水に配慮したインフラ整備を行う。
ホーチミン市の南部に位置する7区はナムサイゴン(南サイゴン)として既に都市開発が行われ、日本人学校やサイゴンサウスインターナショナルスクール、FV病院などが建設され数多くのアパートが立ち並んでいますが、そのエリアをさらに拡張していく計画となっています。
北西部(12区・ホックモン郡・クチ郡):広大な土地と自然環境を有する自己完結型の大型新都市の開発に適した地形を活かす。
北西部はホーチミン市に居住している日本人からも馴染みのない郊外エリアではありますが、ホーチミン市の既存中心部への通勤圏ではなく、エリアで完結する新しい年として開発を進められていくようです。現在は物件数も少ないエリアですが、今後は大規模開発も増えていくことが予想されます。ホーチミン市外では、同じようなエリアとして隣のビンズオン省新都市区というエリアも開発されており、複数の衛星都市が生まれてくる可能性もあります。
南西部(タンフー区・ビンタン区・ビンチャイン郡):地域に相応しいインフラ整備を行うのみとする。
こちらも郊外の住宅街であり、人口集中による渋滞や洪水などの問題が発生しているため、インフラ整備を行うということでしょう。近視的には大規模な開発が行われる可能性は低いですが、住居プロジェクトが単発的に行われている他、インフラ整備が完了した後にはホーチミン市中心部(1区~2区)への通勤圏としてさらなる開発が進む可能性もあります。
トゥーティエムエリアの開発
ホーチミン市の都市開発の中でも特筆すべきはホーチミン市2クトゥーティエムエリアの開発でしょう。ホーチミン市1区からサイゴン川を挟んだ対岸のこのエリアは2010年頃までバラック小屋が広がる湿地帯でした。当時はホーチミン市1区へ往来するためには渡し船を使わなければならず、街として分断されていたのですが2012年に日本政府のODAによりトゥーティエムトンネルがサイゴン川下に開通し、ホーチミン市1区と直接つながりました。

トゥーティエム新都市
こちらがトゥーティエム地区の未来図であり、高層ビル、大型公園、商業施設などが配置される予定となっています。なお、上に書かれている5本の橋の内、一番左側のトゥーティエム1橋を除いた4つは未架橋となっており、現在左から2番目の1区のレタントンエリアと結ぶトゥーティエム2橋が建設されています。その他に反時計回りに歩行者専用橋、トゥーティエム3橋、トゥーティエム4橋が計画されており、それぞれ1区、4区、7区と接続されます。
こちらはトゥーティエム2橋の2020年3月時点の建設状況です。ベトナム語ですが、映像から急速に開発が進められている様子がおわかりになると思います。
また、中央を貫くマイチートー大通りはトゥーティエムトンネルで1区と接続されている他、通りの直下にホーチミン市メトロ2号線が建設され、鉄道でも1区と繋がることとなります。
中心部が2区トゥーティエム地区に移動し、そして新たな橋が架橋されることで、7区が中心部に近づくこととなります。現在は1区に至る橋が2本しかなく、朝の通勤時は渋滞が発生しておりますがトゥーティエム3橋、トゥーティエム4橋を利用することでトゥーティエム地区に直接つながりますし、更に1区へのルートの選択肢も増えることになります。
ホーチミン市からハノイ市に向かって建設が進められている高速道路も2区の先に入り口があり、近隣省へのアクセスや、ホーチミン市の新たな玄関口となるであろうロンタイン国際空港へのアクセスも良好です。2050年開業を目標に計画されているホーチミン市とハノイ市を結ぶ高速鉄道のホーチミン駅もこの2区のトゥーティエム地区の先に設置される計画となっています。
元々何もなかったところだからこそのダイナミックで効率的な開発が行われているのが、2区トゥーティエム地区であり、今後ホーチミン市の重心がこちらへ移ってくる可能性が非常に高いと考えられます。2区の更に東にある9区・トゥードゥック区も同じくらい目が離せないエリアであり、今後大きく開発が行われていくことでしょう。
※本記事では、ホーチミン市2区のトゥーティエム坊、アンカン坊、アンドイドン坊、ビンアン坊、ビンカン坊及びアンフ―坊の一部という行政区分のエリアを総称してトゥーティエム地区として紹介しています。
ホーチミン市メトロの路線計画
ホーチミン市の地下鉄計画は現在1~6号線とトラム1路線、モノレール2路線の合計9路線が計画されています。その中で、現在着工しているのはメトロ1号線(青)と、2号線(赤)の一部区間です。1号線は2021年開業予定、2号線は2026年一部開業予定です。

ホーチミン市メトロ路線図
(出典:http://www.maur.hochiminhcity.gov.vn/web/bqlds/720)
図中、太い色のついている線がメトロ、トラム、モノレールの計画路線です。
ホーチミン市メトロ1号線はベンタイン市場の直下に設置されるベンタイン中央駅を起点として、北東方面に伸びる路線です。2区タオディエン地区、そして9区、トゥードゥック区というホーチミン市東部の中心部を貫く路線であり、ホーチミン市-ビンズン省境までとなっています。将来的にはビンズン省メトロ、及びドンナイ省メトロへの直通運転も検討されています。

ホーチミン市メトロ1号線車両
こちらがホーチミン市メトロ1号線の車両です。(写真は輸出前に日本国内で撮影されたもの)地上部110km/h、地下部80km/h、ピーク時は2分10秒間隔で運行されることとなっており、日本の大都市圏の鉄道同様の速度、運転頻度となります。
2021年の開業後は人の流れも大きく変わることが予想されており、それに伴い沿線の不動産価格や家賃に大きく影響が出ることも予想されています。
2号線も現在建設に向けて用地取得が始まりました。3号線以降は建設や用地取得がまだ行われておらず、今後の計画変更の可能性もありますが、駅の位置や路線の位置は現時点での計画が決められており、その計画を前提とした建設プロジェクトも始まっています。
まとめ
ホーチミン市の都市計画の中でも主要なものを紹介させていただきました。それぞれの都市計画の未来図が実デンされた時、今とは全く違う街になっていることでしょう。そうなると、人の流れも、地価も、何もかもが今とは違っている可能性もあります。ベトナム不動産投資を検討する際にはそのような「未来」のホーチミン市の可能性に対して投資を行うことになります。
現在は中心部から少し離れた立地だとしても、それが将来の都市計画によっては大きく成長する可能性もあますよね。東京周辺でも、武蔵小杉が2009年から急成長したように、ホーチミン市周辺にもそのような急成長を見せる可能性のある計画が多数存在しています。そういう物件を狙っていくのも不動産投資の醍醐味なのではないでしょうか。